『ほんの森ブックレット 学校で使える5つのリラクセーション技法』(藤原忠雄/著 ほんの森出版)
はじめに
一九九四年、世界保健機構(WHO)がライフスキル教育の推進を提唱しました。ライフスキルとは、「日常生活で生じる様々な問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」であり、一〇の中核的なスキルから成ります。その中の「ストレスへの対処」「情動への対処」「対人関係スキル」などのスキルは、ストレスマネジメントに関するものであり、ライフスキル教育の柱の一つは、ストレスマネジメント教育であると言えます。
WHOのこの提唱を受けて、各国で様々な取り組みが始まりました。我が国では、二〇〇二年に日本ストレスマネジメント学会が設立されました。各方面で展開されていた様々なストレスマネジメント教育の実践が、この学会で報告され、蓄積されるようになりました。
ところで、ストレスマネジメント教育という言葉こそ使われていませんでしたが、リラクセーションの教育現場での活用は、かなり以前から取り組まれ、ストレス軽減、情緒の安定、集中力の向上等の効果が報告されていました。しかし、それらの多くは個々の技法の効果として報告されていたにとどまり、教育活動における実際的な活用を前提とした全体的かつ体系的にまとめられた報告ではありませんでした。本書がその最初の本となるようです。
なお、本書は『月刊学校教育相談』の連載「心も体も解きほぐすリラクセーション」(平成一六年度の一年間、全一二回)に加筆修正を行い、冊子にしたものです。内容は、私が二〇年あまり取り組んできた「教育活動におけるリラクセーションの活用」に関する取り組みを紹介したものです。書名のとおり「学校で使える」を前提に、五つのリラクセーション(一〇秒呼吸法、自律訓練法、漸進性弛緩法、動作法、イメージ法)の解説と活用例を紹介しています。どれも椅子に座った状態でできるものです。解説はできる限りポイントを絞って簡略なものにし、実際の声かけ例を逐語で紹介することに重きを置きました。活用例は自験例を中心に、岡山県内の小・中・高校の研究仲間の実践も紹介しました。
現在、我が国のストレスマネジメント教育の展開モデルの主流は、リラクセーションをベースにしたストレスマネジメント教育プログラムです。それ以外のプログラムでも、重点の置き方に違いはありますが、リラクセーションが盛り込まれています。
リラクセーションだけでストレス対処は十分とは言えませんが、リラクセーションはストレスマネジメント教育の中核であり、基盤です。すべての児童生徒が、より健康的な生活を送るためのスキルとしてリラクセーションを習得し活用できるようになること、そのためのライフスキル教育、ストレスマネジメント教育が展開され、普及することを願ってやみません。
一人でも多くの先生方がリラクセーションを習得され、ストレスとつきあい上手になっていただき、そして、児童生徒がストレスとつきあい上手になるための支援に取り組まれることを願っています。本書が少しでもそのお役に立てれば幸いです。
著 者
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