『子どもの問題と「いまできること」探し』(菅野 純/著 ほんの森出版)

 はじめに

 いま、学校教育の場では、次のような問題が深刻になっていないでしょうか。

・子どもたちの心の問題が深くなってきている
・保護者との関係が難しくなってきている
・発達障害のある子どもの指導が、通常の学級で増えてきている
・スクールカウンセラーをはじめ、さまざまな立場の人が学校教育の場で子どもとかかわるようになり、その調整が必要となってきている
・土曜休日が授業や学校行事に少なからぬ影響を与え、日々の忙しさや指導の負担が教師の心と身体からゆとりをうばっている
・さまざまなストレスが、時に校内の人間関係をきついものにし、体調不良や精神的疲労におちいる教師が増えてきている

 たとえば、子どもたちの生活の基盤でもあり、成長の基盤でもある家庭はどうでしょうか。子どもを守り、安定した生育環境を提供しなければならない親自身が、心身ともに揺らいだり、苦しんだりしている家庭があるのではないでしょうか。家庭崩壊に陥ったり、さまざまなストレスやトラウマをかかえた親がわが子を虐待することもまれではありません。また、親となったものの、十分に社会性が育っておらず、わが子へのしつけや家庭教育がしっかりなされていない家庭もあります。
 現代の教師は、子どものみならず親に対しても、心のエネルギーの補給や、大人としての社会性の獲得に心配りをしなければならないのです。
 一方、「特別支援教育」がトップダウン式に学校現場に下りてきて、戸惑いをかくせない先生方も少なくないのではありませんか? もちろんこれまでも通常の学級で指導の難しい発達障害のある子とかかわっていた先生もたくさんいることでしょう。しかし、そうした先生方は試行錯誤の連続だったのではないでしょうか。集団指導と同時に、個別指導の必要な子どもにも指導を行っていくことは、とても難しいことです。いま、多くの先生方が、学級での発達障害指導に取り組まなければならなくなってきているのです。
 その他にも、不登校をめぐって学級担任や教育相談係、養護教諭、スクールカウンセラーなどが、それぞれのよさを活かしながらつながり、また、外部の専門機関とも連携するためにはどうしたらよいか、といった新たな問題もクローズアップしてきています。
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 この本は、いま学校教育のなかで出会うこうしたさまざまな問題に対して、悩みながらも一生懸命取り組んでいる先生方との出会いから生まれました。そうした先生方と私が、「いま学校で、できること」を少しでも見つけようと知恵を出し合った結果、生まれた本とも言えるでしょう。
 本書が、日本のどこかで人知れず地道に、心ゆたかに子どもたちとかかわっているあなたの傍らにあって、ともに歩むことができればと思っています。
 また、これから教師や教育カウンセラーをめざしていく若いみなさんや、保護者の方にもぜひ読んでいただきたいと心より願っています。
                                菅野 純

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