『チーム援助で子どもとのかかわりが変わる』(石隈利紀・山口豊一・田村節子/編著 ほんの森出版)


はじめに

 学校の先生方は日々頑張っています。大勢の子どもを一人で担任し,一人ひとりの子どもの様子に気を配り,学習面のみならず生活全般に親身にかかわっています。今までどれだけ多くの子どもたちが先生方と出会ったことで救われたことでしょうか。
 しかし,最近は世の中の事情が一変しています。長引く不況は子どもの家庭生活を脅かし,情報の氾濫は子どもを混乱させる一因ともなっています。一方,通常学級には約6%の軽度発達障害と思われる子どもたちたちが存在しているといわれています。
 このように子どもたちが先生に求める援助ニーズは大きく,かつ多様になっています。今,まさにそれらの子どもたち一人ひとりに合った対応が先生方に求められています。
 しかし,このような子どもたちの大きく,かつ多様なニーズに,担任の先生が一人で応えることは,もはや時間的にも精神的にも限界に近いことと言えるでしょう。
 では,どうやってこれらの多様な子どもたちのニーズに応えていくことができるでしょうか。
 その方法の一つとして,学校心理学が提案する心理教育的援助サービスという考え方があります。その理論の中核が「チーム援助」すなわち,保護者を含めてその子どもにかかわる人たちがみんなで援助しよう、という考え方です。
 本書の第T章の1,2,4では,学校心理学やチーム援助についての理論の要点を説明しています。3では,チーム援助を具体的に推し進める方法の一つとして1999年に誕生した石隈・田村式援助チームシート・援助資源チェックシートについて解説しました。
 さらに,第U章の5から9までは小学校,第V章の10から14までは中学校,第W章の15から18までは高校でのチーム援助の実践をご紹介しました。
 嬉しいことに援助チームシートを使った実践が全国に広がりをみせ,たくさんの実践の報告が私たちの元に集まってきています。それらは特別なことをした実践ではなく,できることを行っている実践です。
 今回ご紹介した実践は,数ある実践の中のほんの少しですが,先生方も「これならできる」と思われることが,きっとたくさん見つけられることでしょう。どうぞ,こんなやり方もあるということをぜひ知ってください。そして,取り入れられることが一つでもあれば,編者一同こんなに嬉しいことはありません。
 では,さっそくページをめくってチーム援助の実践の数々をご覧ください。


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