<森・黒沢のワークショップで学ぶ>解決志向ブリーフセラピー


 おわりに

 実は、私(森)はこの本が出てしまって、少しばかり(いや、少しばかりではない!)青ざめているのです。この本は、本当によくできていて、私たちの研修をほとんどそのままここで再現してくれちゃっているのです。だから、こんな本が出てしまったら、これから私たちの研修に来てくださる方の数が激減しちゃう! だって、わざわざ研修に出なくたって、この本を読めばそれで済むんだもん……あーあ、もうちょっと出し惜しみしておけばよかった……。
 あるいは、これからの研修は、その内容を総取っ替えしなくちゃいけなくなる! 同じネタ使ったら、「またあのネタやっとる」と思われるに決まってる……でもなぁ……そんなにネタあるわけでもないしなぁ……どうしようかなぁ……もう、初級はやめちゃおうかなぁ。「この本読んでください」で終わり。あ、それいい。そうしよ、そうしよ(と、すっかり投げやりになって、突っ伏す森。そして酒をグビリ)。
 ……………………
 あ〜らら、森先生がわけのわからない落ち込み(妄想?)を始め、そして酒に走りましたねぇ。これだからねぇ。そう、森先生は、実はとっても「問題志向」なんです。
 ねえ、こう考えてみましょ? ほんの森出版のおかげで、本当にいい本に仕上がりました。私たちの研修をとてもよく再現してくださっています。そしてとても楽しく読める。
 でもね、森さんの命は「舞台」でしょ?(ご存知の方もいらっしゃると思いますが、森先生は東大の学生演劇出身なんです)。「舞台」は「一回性」の芸術、同じものの再生じゃないって、森さんはいつも言ってるよね。
 この本は確かにいい本よ。でも本は本。ライブとは違う。
 これを読めばますます皆さんが、「実際はどうなんだろう?」、「実物の二人は、どんな美男美女なんだろう?」(アレッ?)、「もっと詳しく話してくれるんだろう」、「これでもまだきっと抑え目に書いてあるんだろうな。実際はもっと刺激的なんだろうな」、「もっとたくさんボケとツッコミが炸裂してるんじゃないか」、「どんどん質問したいな」とか考えてくださるに決まってるじゃない。
 大丈夫よ! お客さん、逆に増えるわよ!
 ……(森、ムクムクと)フッカーツ!! そうだよね、そうだよね! 実際、何人もの方が、何度も同じ研修に参加してくださってるもんね。 いやぁ、本当にそうだ。
 (ホント、単純なヤツ……よく言えば、「憎めない」だけど……)
 え? 何か言った?
 いえいえ、何にも。
 それに今日は、KIDSから見える富士山(初富士)が、本当に素晴らしいからねぇ!
 オイ! それ、ロッケル!(「ロッケル」の意味を知りたい方は、KIDSの「精神医学入門」を受講して下さいネ)
 いやぁ、ロッケル、ロッケル。ということで、おやすみぃ!(グー、ゴー、スー、ピー)
 ハヤッ! 正月から酒ばかり飲んで、困りますねぇ。

 ……申しわけございません。森が寝てしまいましたので、あとは黒沢がきれいにまとめさせていただきます。
 本書編集の労をお取りくださった、ほんの森出版の小林敏史さんに深く感謝します。本当にありがとうございました。そして本当にお疲れ様でした。
 小林さんは、自ら私たちの研修会に参加されてのテープ録り、ノート取りから始められ、膨大な量のテープを整理し、そして編集作業と、それは気の遠くなるような工程(行程)をコツコツと積み上げてこられました。
 小林さんはこうおっしゃいました。この大変な作業を支え続けたものは、読者の皆さまの「この本を早く手に入れたい」、「こういう本がほしい」という絶え間ない声だったと。そして、この本の編集作業は、本当に楽しかったし、とても勉強になった。他の仕事がなかったら、こればかりをしていたかったと(これだから、小林さんったら! そう、小林さんは、本当にコンプリ上手なのです。きっと臨床やっても食っていけますよ!)。
 そして、小林さんのご努力を、陰から日向から支え続けられたほんの森出版の佐藤敏編集長の存在! 本当にありがとうございました。
 そして何よりも、私たちの研修をずっと支えてくださったたくさんの参加者の皆様、本当にありがとうございました。皆様の熱意やご厚意がなければ、平成十年に始まったKIDSの研修も、ここまで続けられませんでした。そして研修の中で一番教わってきたのは、実は私たち自身だったのです。参加者の先生方からうかがう実践報告は、そのどれもが私たちに様々な新しいヒントや勇気を与えてくださいます。これがあるから、やめられないのです。
 読者の皆さんに、この本が少しでもお役に立てたなら本望です。大切なのは、一人でも多くのいい実践家が生まれ育つこと、一人でも多くの方の素敵な未来がつくられていくことです。この本を読んでいただいて、今、また旅が始まるのです。読み終えて、ゴールテープを切ったわけではありません。この本を読み終えて、また読者の皆さんが日常に戻られたとき、その景色が今まで以上に素敵に見えたとしたら、とても嬉しいと思います。少しだけ今までよりも、「自分って捨てたもんじゃないな」、「これでよかったんだ」、あるいは「こうしてみるのもいいかもしれない」って、元気が出てきたら本当に嬉しいです。読者の皆さん(と、小林さん)に、「愛」と「感謝」と「祈り」を込めて……チュッ……。

 ん? なんかした?
 アンタじゃない!
 ……ムニュッ……

 (……ええっと、何だっけ? あ、そうそう)私たちは現場の実践家である皆様の感覚 を信じています。何が役に立つのか、何が必要なのかは、セオリーやマニュアルの中にあるのではなく、皆様の実践感覚の中にあるのです。その感覚を研ぎ澄まされて、今年も、そしてこれからもずっと、よい年でありますように……。

 平成一四年元旦
                               黒沢 幸子
                               森 俊夫(スヤスヤ)

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