『ひとりで悩まずに…いのちの電話』刊行の意図
1971年10月1日(金曜日)午前0時。第一号の電話相談は、くじ引きで決まっていた後庵正治氏が受けました。午前0時3分でした。
4台の電話を数名の担当者が翌朝8時まで担当して33件の相談を受け、そして次の担当者に引き継がれました。
夜勤の担当者はほとんど仮眠もしなかったので、どの担当者の目も真っ赤でした。事務局員の差し出す心づくしのコーヒーを飲むのももどかしく、それぞれの職場に出勤にして行きました。
この日、24時間に受けた相談は252件でした。
(いのちの電話30周年記念式典「開会の言葉」より)
このようにして東京で始まった「いのちの電話」活動は、30年の月日を経て全国50カ所に電話センターができ、年間70万件近い(2000年度で670,056件)相談を受けるようになりました。その相談を受けるのが、約8,000人の訓練を受けたボランティア相談員です。
この『ひとりで悩まずに…いのちの電話』は、日本に「いのちの電話」が生まれて30年を迎えるのを記念して、「日本いのちの電話連盟」が主唱し、編集されたものです。
本書は、ボランティア相談員の初級研修用としても使われ始めていますが、「いのちの電話」のことを広く皆さんに知っていただき、この運動を支援しようとする人たちが大勢出てくることを願って発刊されたものです。いわば、「いのちの電話」への入り口の書と言えるものです。年間3万人を超える方々が、自殺でいのちを絶っています。その3万人のまわりには、多くの残された関係者がいます。ボランティア相談員が約8,000人いるとはいえ、まだまだ足りません。「地味で苦労が多い高度なボランティア活動」を支えようと考える人々の掘り起こしが急がれています。