先生のための やさしいブリーフセラピー 読めば面接が楽しくなる

 はじめに

 この三月に(二〇〇〇年)、四年間続いた『月刊学校教育相談』誌への連載が終わり、毎月やってくる締切に追われる日々からようやく解放されてほっとしていたところに、「連載を本にしますから、編集をよろしく」との電話がかかってきて、またぞろ地獄の日々に逆戻りか! と思いきや、さすがにもう原稿はできているだけあって、それほど手間なく作業は終わり、ここに一冊の本として皆様のお手元にお配りできる運びと相成りました。シャンシャンシャン!
 昨今、学校現場では不登校、いじめ、暴力など様々な問題が起こっており(今は青少年犯罪が話題となっている)、児童・生徒たちに教師がどう関わっていけばいいのかについての指針が欲しいということで、一九九七年四月より私の連載は始まりました。そこで、従来のいわゆる「カウンセリング」とは一味違った発想の「ブリーフセラピー」のことをご紹介申し上げたところ、これが意外にもご好評を賜り、連載は四年にわたって続くという快挙? を達成してしまったわけです。
 実際の連載では一年目に、その「一味違った」という部分を中心に、すなわち、どこがどういうふうに従来のいわゆる「カウンセリング」の発想と異なっているのか、「問題」というものをどういうふうに捉えるのか、「援助」はどこに力点が置かれるのか、などについて述べられました。と、書くとなんだか難しそうに聞こえますが、ご存知のかたはご存知のように、関西弁多用のハチャメチャな文体(内容は結構高度だと自分では思っているんですが)でそれらは語られ、そのあまりのハチャメチャさのために? 本書には採用してもらえなかったくらいです(ぜひ入れてほしかったんですけど。だって一番笑えるから)。
 二年目と三年目は、一年目の考察? をもとに、今度は「解決志向ブリーフセラピー」の進め方の実際を、面接逐語録なども交えて解説していきました。それが本書としてまとめられたわけです(と言っても本書は編集されていますから、話の順番も含めて、実際の連載そのままではありません)。
 四年目は、セラピーやカウンセリングというよりも「コンサルテーション」をテーマにして、その概念や枠組み、そしてその実際を、これまた逐語録を交えて解説させていただきました。この部分もテーマが若干異なるということで、本書には盛り込まれておりません。
 このように本書は「解決志向ブリーフセラピー」の実際について、読者層を学校の先生にしてまとめられたものですが、もちろんそれ以外の方、心理相談職の方はもちろんのこと、その他の援助職の方、そして一般の方でも充分にわかりやすく、そして役立つものとしてお読みいただけると思います。
 そしてどなたがお読みくださるにしても、あまり「ブリーフセラピー」という言葉にはこだわらずにお読みいただけると幸いです。ここで言っていることは「ブリーフセラピー」だからというよりも、「効果的・効率的な援助」をしたいと思う場合ならどんなときにも必要となってくる基本要素である、というふうに私は思って書いています。だから将来的に「ブリーフセラピー」などという言葉なんか、なくなったほうがいいんです。ここで述べられていることが、別に改めて「ブリーフセラピー」などという名目で語られずとも、教員を含めた援助職すべての人々にとっての「常識」になる日が来ることを、私は心から待ちわびているのです。

 二〇〇〇年七月
                                     森 俊夫

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